ホーム > マレーシア > 【マレーシア】グローバル年金指数17位のマレーシア、日本より優れている?│SDGs

【マレーシア】グローバル年金指数17位のマレーシア、日本より優れている?│SDGs


多くの国々で取り入れられている「年金制度」は所定の年齢に達したりといった条件に該当する人へ定期的にお金が給付される社会保障制度のひとつです。

 

日本の年金制度は、日本に住んでいる20歳以上60歳未満のすべての人が加入する「国民年金(基礎年金)」と、会社などに勤務している人が加入する上乗せ給付の「厚生年金保険」の2階建てとなっています。

日本の公的年金制度図(厚生労働省Webサイトより要約)

日本とマレーシアの年金制度を、2020年に発表された「グローバル年金指数」で比較すると日本の年金制度は39カ国・地域中32位でランク「D」、マレーシアは19位でランク「C+」となり、日本の年金制度よりも優れている面が多いことがわかります。

 

十分性(Adequacy)は老後支給される年金が生活するうえで十分であるか、持続性(Sustainability)は平均寿命と支給開始年齢の関係が妥当であるか、また持続可能な公的年金制度であるか、健全性 (Integrity)は年金制度をより良く運用するための見直しや透明性があるかなどといったことが評価されています。

順位

制度

総合指数値

サブ指数値

十分制
Adequacy

持続性
Sustainability

健全性
Integrity

1位

オランダ

82.6

81.5

79.3

88.9

7位

シンガポール

71.2

74.1

59.9

82.5

19位

マレーシア

60.1

50.1

58.6

78

32位

日本

48.5

52.9

35.9

59.2

マーサーグローバル年金指数2020をもとに作成

日本の年金制度は、自分が払った年金を将来受け取るという制度ではありません。払ったお金は現在の年金受給者の給付に充てられ、わたしたちが年金を受給する年齢に至ったときに年金を支払っている世代の人々に支えられる制度となります。

逆に、マレーシアの従業員積立基金制度(Employees Provident Fund : EPF)は個人が積み立てた金額を一定年齢に達したときに本人に払い戻しする制度となり、人口の高齢化に直面しても若年世代に負担をかけない財政的に安定した制度となっています。

マレーシアはASEAN(東南アジア諸国連合)の中でも比較的早くから年金制度に着手していますが、年金制度が設立されることになった背景は、1948年マレー系と非マレー系(主に中華系住民)との軋轢が悪化してマラヤ共産党による武力蜂起が勃発したことにさかのぼります。

マレーシア政府は国民に平等と安心を与える政策として1951年のマラヤ連邦立法会議においてEPF法(Employees Provident Fund Ordinance)を成立させ、翌年1952年に民間労働者のための老齢基礎年金を担う「EPF」が設立されました。

マレーシアの社会保障制度は「公務部門(公務員、軍人)」と「民間部門」に分かれており、「公務部門」では老齢年金、遺族年金、障害年金、医療保障、労働災害補償まで幅広い保証を公務員社会保障局(JPA: Jabatan Perkhidmatan Awam Malaysia)が担っています。

一方「民間部門」は老齢年金は“従業員積立基金(EPF:Malaysian Employees Provident Fund/マレ―語表記KWSP)”が担い、遺族年金、障害年金、医療保険、労働災害補償は“労働者社会保障機構(SOCSO: Social Security Organizaion/マレ―語表記PERKESO)”が担っています。

公務員年金制度(KWAP)

名称

公務員年金信託基金制度(Retirement Fund Incorporated:KWAP)

運営主体

公務員年金信託基金(KWAP)
マレーシア財務省及びマレーシア人事院(JPA)が年金政策を担当。
2015年の退職基金法の改正により、運営面についてはJPAから引き継がれた

制度形態

確定給付形年金制度
・一般的な公務員に対する制度。その他裁判管、議員、政務秘書などに対する年金制度がそれぞれ存在する
・各省庁で転職、転属があった場合は勤続月数が加算される
・制度をまたいで転職した場合は各年金制度から給付される
・軍属に対しては別途の年金制度が国防省により運営される

被保険者資格

公務員

年金受給要件

支給開始年齢:60歳
最適加入期間:常勤の被雇用者として3年。(例外あり)

備考

公務員は公務員年金信託基金(JAP)と民間被雇用者を対象にした従業員積立基金(EPF)のどちらかの加入を自ら選択できる。

JPAは本人負担もなく、EPFよりも保障内容が手厚いため、殆どはJPAの加入を選択するが、民間企業に移った場合にJPAからEPFへの連動制度がないため、技術者や医師など将来民間企業に移る可能性が高い公務員の約1%がEPFを選択している。

従業員積立基金制度(EPF)

名称

従業員積立基金制度(Employees Provident Fund : EPF)

加入者数

約1459万人が加入、うち763万人が現行受給者(2019年12月時点)

加入社数

約52万社が登録(2019年12月時点)

運営主体

マレーシア財務省管轄の従業員積立基金(KWSP/EPF)

制度体系

確定拠出型年金制度(民間被用者向け)

  1. EPFは従業員とその雇用者の双方が月給の一定額を加入者の個人貯蓄に積み立てる強制拠出制度。各個人の積立金と資金運用による配当が給付に加算されて払いもどされる
  2. すべての従業員にEPFへの登録・拠出を義務づけられ、公務員であってもEPFを選択することは可能

被保険者資格

会社従業員、自営業者、公務員、主婦、外国人労働者なども任意で加入可

年金受給者

支給会社年齢:55歳又は60歳
最低加入期間:規定なし

EPFの積立金口座管理方法

・EPFに加入申請をすると個人1名につき2つの口座(アカウント)が開設される

・加入者は管理所管のホームページで自分の積立金を確認することができる

・マレーシアの銀行金利が3~4%(2021年2月現在)であるのに対し、EPFでは積立て原資に対して5~6%が複利で加算される

・EPF制度は個人口座への積立金

 

日本のように若い世代が老年世代を支えるという年金制度では、世代による損得が将来的には財政破綻を起こすことが懸念されますが、マレーシアのEPFはあくまでの個人が積み立てた金額を本人に払い戻しする制度となります。

 

そのため、マレーシアの「従業員積立基金」制度は、人口の高齢化に直面しても若年世代に負担をかけない財政的に安定した制度となります。

口座の種類

種類

目的・使用用途

備考

アカウント1

60歳以降の老齢保障を目的として、拠出金の70%を積み立て

55歳以降受給可

アカウント2

住宅購入、教育費、医療費を目的として、拠出金の30%を積み立て

目的があればいつでも支払い可

EPFの保険料

区分

年齢

月額給与

雇用主

従業員

被用者

60歳未満

5,000リンギ以下

13.0%

11.0%

5,000リンギ超

12.0%

11.0%

60~75歳

5,000リンギ以下

6.5%

5.5%

5,000リンギ超

6.0%

5.5%

外国人労働者

5リンギ

11.0%

  • ※自営業者やフリランサー、運転手、農業従事者、主婦は任意加入

拠出金は自分の裁量で決めることができ、最低50リンギから最大5,000リンギまで自由に拠出することができます。政府は本人が拠出した金額の5%(最大年間60リンギ)を補助しています。

社会保障制度に関する課題

マレーシアの社会保障制度の「公務部門」は全額国庫負担(本人負担なし)となり、老齢保障(年金)と医療保険は終身となります。一方で民間部門の老齢保険(年金)は雇用主と従業員による保険料を財源とする積立金で国庫負担はなく、公務部門と民間部門には大きな格差があります。

マレーシアも他の国と同様に高齢化社会が進み、また同時に出生率は減少しており、急激な高齢化と少子化がすすんでいます。その結果、全額国庫負担となる「公務部門」では将来的に起こりうる財政上の懸念が浮上しています。

 

 

また、マレーシアではEPFに加入していても70%の人々が受給時に一括受給し短期間で消費してしまうため、その後生活に困窮する高齢者が多い実情があります。

 

 

上記のような実情を踏まえて2007年から「基礎貯蓄計画(Basic Saving Plan)」の政策を進め、55歳までに12万リンギット(約320万円)を貯蓄するよう国民に推奨し、平均寿命まで生活費として、使用できるように、個人資産の積立策を推進しています。

平均寿命

出生率

あらゆる場所で、あらゆる形態の貧困に終止符を打つ
あらゆる年齢のすべての人々の健康的な生活を確保し、福祉を推進する
国内および国家間の不平等を是正する

わたしが65歳になったとき

世界には、それぞれの国に応じた年金制度がありますね。超高齢化社会に突入した日本が取り組むべき重要な課題が、この「すべての人に健康と福祉を」という目標ですね。

My アクションプラン(一例)

Step 1:インプット│現状を知り、課題を発見する

2021年現在、日本における65歳以上の割合は28.7%。2050年には日本における65歳以上の割合は37.3%になると予想されています。

少子高齢化社会に適した社会の仕組みが必要となってきます。

Step 2: プロセス│自分の身の回りに置き換えて考える

生涯、社会とつながりを持ち、収入を得れる事ができないだろうか?

Step 3: アウトプット│自分に何が出来るだろう(My アクションプラン)

労働力不足とエイジレスに働ける環境をマッチングさせる目的で、子育て世代が安心して仕事ができるよう、女性が妊娠から子供が就学する前まで、家事や育児を地域内のシニア層に頼める仕組みづくりを考えてみます。

3つのステップで、あなたができる「My アクションプラン」を下記のフォームへ入力してアウトプットしてみましょう。

お送りいただいた内容に関しては、弊社サイトにて公開させていただくことがありますので、あらかじめご了承ください。

SDGs(エスディージーズ)とは、国連が2030年までに達成を目指す国際目標「持続可能な開発目標」Sustainable Development Goalsの略です。 SMIでは「持続可能な開発目標(SDGs)」の記事を掲載しています。

お問い合わせ

コメントを残す

メールアドレスが公開されることはありません。 が付いている欄は必須項目です


関連記事
0334381014
メールでのお問合せ